宗教について 〜 人の生と死を考える 注26

公開: 2023年3月12日

更新: 2023年9月12日

注26. 人間社会の階層

文明発祥後の社会では、社会を支配する階級と、支配される人々の階級が生まれます。これは、人間社会が封建制度に基づく社会になってゆくことを意味しています。封建制度では、王は、両親が王や王妃の家庭に生まれ、その血縁に当たることを理由に、王の権力を引き継ぎます。これを世襲制と言います。この王権の世襲が、偶然ではなく、必然であることを理由づけるために、社会の階層が生まれ、踏襲されるようになったと考えられます。

紀元前の1,000年より前にインドで成立したベーダの神話では、人間社会には4つの階層があることが述べられています。これは、最近までインド社会に存在したカースト制度の基礎になっていた思想です。元々は人々の肌の色を区別したものだったようです。同じように、人間社会の階層に関する記述は、メソポタミア時代の古代バビロニアの「ハムラビ法典」にも記述されています。

この封建制度は、人間の社会を安定化させる働きがありました。人間が社会を作り出すと、人間は社会が不安定になり、混乱することを望まなくなるので、社会に属している人々にとっては、この封建制度は、有意義なものになります。しかし、それによって得られる社会の安定性は、変化を阻害する要因になるため、社会の発展を拒むようになります。例えば、たまたま、王として社会を統治する能力が低い人が、世襲だからと言う理由で王の座に就いた時、政治がうまくゆかなくなり、社会が破たんするような結果になることもあるのです。

そのようなことになると、人々は王を変えることが必要であると考え、王の階層にある人や、それに次ぐ階層にある人々の中から、その王に代わって社会を治められそうな人を探します。そのようにして、王権の交代が生じると、王は変わり、時代も変わります。そして、政治が安定している間は、王権は再び、その王の一族の間で世襲されるのです。これが封建社会の世襲制度の仕組みです。

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